山形旅行記のつづき。
出羽三山参拝のあと肘折温泉に一泊、翌日は酒田市観光。
土門拳記念館へ行った。
一番足を止めてしまったのは、土門拳賞受賞の桑原史成さんという報道写真家の写真展だった。
半世紀に渡り水俣病患者を捉えた通史。重い。生き地獄のような惨禍を生きたひとたちの記録。
母親の胎盤から水銀に侵されて生まれてきた、ある胎児性の患者とその家族の写真が忘れられない。
明らかに重篤で目を背けたくなる姿の彼女だが、彼女と彼女を囲む家族は満面の笑顔。
嘘偽りない、無理も感傷も感じられない。本当に皆嬉しそうな笑顔なのだ。
説明にこんなことが書いてあった。
母親は彼女は宝子だと言っていた。
彼女が胎盤から水銀を吸いとってくれたからこそ、母親である自分は重篤にならず、後に産まれた子供たちは無事であったのだと。
彼女は自分達家族を守ってくれた大切な宝子なのだと。
写真の笑顔からは本当に、この家族がどんなに彼女を愛し、彼女がどんなに大切にされてきたかが伝わってきた。
苦しみのなかの曇りない輝き。
重量級の苦難のなかでも、あんな風に愛を持って生きられるのか。
どんな過酷な境遇を持っても決して奪うことはできない、人が本質として持つ光をみた気がした。


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